外国人技能実習生ニュース

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外国人実習生は沿岸の支え 震災時から650人以上増加

2016/03/06 中日新聞

 

 岩手、宮城、福島の三県で地場産業などに従事する外国人技能実習生が、東日本大震災の発生時から大幅に増えていることが分かった。少なくとも六百 五十人以上の増加とみられる。岩手と宮城の沿岸部では水産加工業の人手不足が深刻化しており、外国人実習生が貴重な働き手として支えている。

 

 外国人技能実習生を支援する「国際研修協力機構」の調査では、震災時に三県にいた実習生は四千百人。うち六割の約二千五百八十人がすぐ帰国したが、その後、新規入国が増えるなど徐々に回復してきた。

 厚生労働省事業者の届け出を集計した外国人雇用状況によると、二〇一五年十月末時点の実習生は四千七百五十六人。一二年比の伸び率は88%と全国平均の25%を上回る。岩手、宮城両県は水産加工を含む食料品製造、福島県では縫製など繊維関連に多い。

 岩手県大船渡市の森下水産では、震災時、若い中国人女性が約二十人いたが、福島第一原発事故の影響もあって相次いで帰国した。四カ月後に操業を再 開すると、彼女たちは自発的に戻ってきたという。森下幸祐専務(58)は「人がそろわない中で本当に助かった」と今も感謝を口にする。同じ実習生が従事で きる期間は最長三年間。入れ替えを経た今も約二十人が中高年の女性らと働いている。

 ハローワーク大船渡管内(大船渡市、陸前高田市、住田町)の実習生は約三百三十人と、岩手県内で最も多い。低賃金労働との見方もあるが、「コスト が理由ではなく、人がいないからだ」と森下専務は反論する。水産加工の現場は長く地元の女性が支えてきたが、震災前から立ち仕事が敬遠されるように。震災 後は海の近くに住む人が少なくなったこともあり、ハローワーク大船渡での昨年十二月の求職者数は五年前の三分の一まで減った。

 岩手、宮城両県は昨年、沿岸部で実習生の受け入れ枠を増やす特区の認定を政府に申請。宮城・塩釜市と岩手・釜石市が対象地域として認められ、従業員五十人以下の企業で単年度ごとに受け入れられる人数が三人から六人となった。

 塩釜港そばの水産加工会社「大膳(だいぜん)」では、ことし二月半ば、四人のベトナム人女性が加わった。コンベヤーで運ばれる宮城名産の笹(さ さ)かまぼこやちくわを手作業で仕分けし包装している。「まだ難しいけど慣れるしかない」と、日本語通訳を夢見るレ・ツィ・ホンさん(26)は意気込む。

 実習生は十人となり、従業員の三分の一近くに。後藤昭文常務(73)は「みんな若くて、のみ込みが早い。今や主力です」と話す。

 (経済部・後藤隆行、桐山純平)