外国人技能実習生ニュース

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タイ実習生、母国で起業 3年で技能習得15人雇用 日本の知恵継承

2017/02/01 西日本新聞

 

バンコク浜田耕治】無一文も同然で日本に渡り、3年間の技能実習で機械整備のスキルと日本語を身に付け、母国で起業を果たしたタイ人がいる。パッタナー・プラチャイブンさん(34)。「安い労働力を集める手段」との批判もある技能実習制度だが「チャンスを与えてくれた日本に感謝している」と語った。

 

 首都バンコクから南東に約60キロ。チョンブリ県の貸工場に、パッタナーさんは2013年2月、金型部品などを製造する会社を立ち上げた。社名はタイ語で「カイハツ・カイゼン・エンジニアリング」。「タイ人だけの会社だが、日本で学んだことを忘れないため、あえて日本語の『開発改善』を掲げた」と言う。

 タイ東北部の貧しい地域に生まれた。6歳のとき母と死別。父(61)はもち米の生産農家で、生活は苦しく、学校に通ったのは小学6年まで。農業の手伝いやバンコクの工場で働く傍ら、通信教育で勉強を続けて高校卒業資格を得た。

 「低賃金の仕事にしか就けない現状を変えたい」。20歳で日本の技能実習生を目指した。当時所持金は300バーツ(約900円)。周囲から宿泊代を借りて試験に臨み、2回目の挑戦で合格した。日本に向かう際も数百バーツしか手持ちがなく「少額すぎて空港で両替してもらえなかった」と笑う。

 実習先は建設機械のレンタル会社だった。栃木県に2年、香川県で1年を過ごし、午前8時から午後5時まで働いた。機械の修理に没頭し、夜は遅くまで日本語を勉強する日々。「近所の60代の女性が毎日、日本語を教えてくれた」。会社は厳しかったが、責任感を持って仕事に向き合う姿勢が次第に認められ「帰国する際は日本人の上司が泣いてくれた」と語る。

 日本語検定の2級を取得。酒もたばこもやらず、3年間で600万円を貯金して、父が暮らす実家を新築した。社長となり15人のタイ人を雇うようになった今も、日本人の仕事に取り組む姿勢や、あいさつの大切さを従業員に伝えている。

 「技能実習制度に改善が必要な点はあるだろうが、実習生も努力すべきだ。目標を持てば道は開けると若者に伝えたい」。パッタナーさんは言葉に力を込めた。