外国人技能実習生ニュース

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外国人技能実習生の摘発急増、2年で3倍…受け入れ先の“ブラック化”から失踪、犯罪に加担

2015/09/07 産経WEST

 

 「技能実習制度」を利用して来日した外国人技能実習生の摘発は昨年1年間で全国で961人に上り、2年前の約3倍に急増したことが7日、警察庁へ の取材で分かった。来日外国人の摘発者全体は微増だったが、増加分の4割以上が実習生だった。専門家によると技術習得のために来日したものの、受け入れ先 の賃金未払いや長時間労働といった「ブラック化」が影響し、犯罪に加担するケースがみられるという。

 警察庁によると、永住者や在日米軍関係者などを除く来日外国人の昨年の摘発は1万689人。在留資格別でみると、「留学」2476人▽「日本人の配偶者等」1641人▽日系人などの「定住者」1618人▽「短期滞在」1198人▽「技能実習」961人-の順に多かった。

  技能実習が占める割合は1割に満たないが、統計を取り始めた平成24年は331人で、25年が643人、26年が961人と毎年急増。摘発者全体は24年から26年にかけて1540人増えているが、うち630人が技能実習だった。

 技能実習の摘発内容別では、期間を越えて国内に居続ける「不法残留」や実習以外の別の仕事をする「資格外活動」などの入管難民法違反が最多で約42%。次いで空き巣や万引などの窃盗が約38%。金銭的な利得を求めて犯罪に走る様子がうかがえる。

 大阪府警などの合同捜査本部が今年7月に中国人グループ14人を摘発したスマートフォンの不正契約事件でも、こうした実習生の一端が明らかになった。

  事件では、転売目的でスマホを不正契約しようと画策した主犯格の男(25)に「スマホが安く手に入る」と持ちかけられ、中国人実習生5人が在留カードを譲 り渡したとして入管難民法違反容疑で逮捕。このうち1人は「金がなかったが、スマホがどうしても欲しかった」と供述したという。さらに、主犯格の男を含む 3人が、受け入れ先から失踪した元実習生だったという。

 

 外国人犯罪に詳しい元警視庁刑事で作家の坂東忠信氏は「低賃金で働かされたり給与の大部分を強制的に管理されたりするなど、一部の受け入れ先では 実習生が『奴隷状態』でこき使われている。過酷な労働状況や経済的な困窮が実習生の犯罪・失踪の増加の背景にあるとみられる」とする。

 こうした状況を受け、政府は実習生を保護して不正行為を防止するための監督機関の新設や、失踪者対策の強化を盛り込んだ技能実習制度の改正案を今国会に提出している。

 大阪府警の捜査幹部は「大半の実習生はまじめ。しかし、自由にできる金が少なく、たくらみのある誘いに簡単に乗ってしまう。金を稼ぐために不法残留したり資格外活動をしたりする実習生は少なくない」と話している。

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  【技能実習制度】 開発途上国の外国人を最長3年間受け入れ、働きながら日本の技術を身につけてもらう制度。農漁業や機械・金属、食品製造などが対象職種 で、零細企業が受け入れ先になっているケースが多い。平成5年から始まり、26年は約16万7千人が実習生として在留。中国からの実習生が約6割を占め、 ベトナム、フィリピン、インドネシアと続く。